紙の出版販売金額1・3%減少/紙と電子合算の販売額は3年連続増加/出版指標年報
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- 日時: 2022/08/15 14:03:51
- 情報元: 日書連
- 全国出版協会・出版科学研究所が発行した『出版指標年報2022年版』によると、2021年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1・3%減の1兆2080億円となった。内訳は、書籍が同2・1%増の6804億円、雑誌が同5・4%減の5276億円。電子出版は同18・6%増の4662億円と大きく伸長し、紙と電子を合算した販売金額は同3・6%増の1兆6742億円と、3年連続でプラスになった。
〔販売金額が15年ぶりに前年越え/書籍〕 書籍の推定販売金額は6804億円、前年比2・1%増で、書籍市場がプラスとなったのは06年以来15年ぶり。ベストセラーが多かった文芸書が約6%増、教科書改訂で多くの新刊が出た中学学参が約7%増、学校での授業の変則化や子どもたちの在宅時間増が売行きに結び付いた児童書が4%増となるなど、好調なジャンルが多かった。 また、出回り平均価格が前年比3・3%(40円)増の1238円、新刊平均価格が同2・8%(34円)増の1241円といずれも上昇したことに加え、『総合百科事典ポプラディア第三版』(ポプラ社、全18巻セット)が本体価格12万円で発売され、金額ベースの上昇に影響した。 返品率改善も書籍市場のプラスに寄与した。金額返品率は32・5%で同0・5ポイント減。長年にわたる地道な送品適正化の取り組みによって返品率は90年代前半の水準まで回復した。 21年の上半期(1〜6月期)は、前年に新型コロナウイルス感染症拡大による書店休業などの影響で落ち込んだ反動と、巣ごもり需要の継続で、前年同期比4・8%増とプラスに推移。しかし感染状況が落ち着いた秋以降は売行きが鈍化。7月期以降は『ポプラディア』刊行の11月期を除き全てマイナスだった。 新刊点数は6万9052点で、前年比0・6%(444点)増と上向いたものの2年連続で7万点を下回った。内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同0・4%(195点)減の4万7394点、注文扱いの新刊が同3・0%(639点)増の2万1658点。前年はコロナ禍で制作中止や延期が多く、点数が大幅に減少。21年は微減にとどまったが、19年との比較では2千点強減っており、減少傾向が続く。新刊推定発行部数は同0・1%減の2億7836万冊。 21年の単行本総合ベスト10は次の通り。(1)スマホ脳/アンデシュ・ハンセン/新潮社(2)推し、燃ゆ/宇佐見りん/河出書房新社(3)52ヘルツのクジラたち/町田そのこ/中央公論新社(4)人は話し方が9割/永松茂久/すばる舎(5)秘密の法/大川隆法/幸福の科学出版(6)本当の自由を手に入れるお金の大学/両@リベ大学長/朝日新聞出版(7)よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑/大野萌子/サンマーク出版(8)呪術廻戦逝く夏と還る秋/芥見下々・原作、北國ばらっど・ノベライズ/集英社(9)呪術廻戦夜明けのいばら道/芥見下々・原作、北國ばらっど・ノベライズ/集英社(10)人新世の「資本論」/斎藤幸平/集英社
〔週刊誌が低迷もコミックス健闘/雑誌〕 雑誌の推定販売金額は5276億円、同5・4%減。内訳は月刊誌が同4・5%減の4451億円、週刊誌が同9・7%減の825億円。月刊誌の内訳は、定期誌が同6・7%減、ムックが同6・1%減、コミックス(単行本、雑誌扱い)が同1・4%減だった。定期誌は、前年はコロナ禍の影響で合併号や刊行延期が続出したが、21年は多くの雑誌が通常刊行に復帰。しかし単号当たりの部数は減少し、メジャーな雑誌の休刊や定期刊行の終了、刊行回数減少などの動きが相次いだ。 20年のコミックス市場は『鬼滅の刃』(集英社)の記録的ヒットで19年比24・9%増と大幅に拡大。21年も、テレビアニメが放映された『呪術廻戦』(集英社)や『東京卍リベンジャーズ』(講談社)がブレイクしたのを始め好調な作品が多く、巣ごもり需要が一巡した夏以降は売行きが落ち着いたものの、年間では前年比1・4%減と微減にとどまる健闘を見せた。 金額返品率は同1・2ポイント増の41・2%。19年、20年とコミックスの好調で改善傾向にあったが再び悪化した。内訳は、月刊誌が同1・0ポイント増の40・5%、週刊誌が同2・3ポイント増の44・6%。推定発行部数は同5・7%減の14億8369万冊で、内訳は月刊誌が同4・5%減の11億1141万冊、週刊誌が同8・9%減の3億7228万冊。 不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同22点減の2953点、ムックは同413点減の6048点。付録つき雑誌の点数は同469点減の9833点だった。創復刊点数は同10点減の33点と過去最少を更新した。休刊点数は同8点減の90点。『JJ』(光文社)、『Seventeen』(集英社)などの若年層向けから、『ミセス』(文化出版局)、『日本カメラ』(日本カメラ社)など中高年向けまでメジャー誌が相次いで休刊あるいは定期刊行を終了した。
〔コミック2割増で大幅伸長続く/電子出版〕 電子出版の市場規模は4662億円で、同18・6%増と大幅伸長が続いた。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同20・3%増の4114億円、電子書籍が同12・0%増の449億円、電子雑誌が同10・1%減の99億円。コミックは、前年に巣ごもり需要で拡大したユーザーが定着した上に新規ユーザーも増加。映像化作品のヒットもあり2割増となった。書籍も新規ユーザーの拡大が続く中、セールやキャンペーンでの販売が好調。紙書籍発売と同時の配信など電子化率が高まり、電子化を解禁する作家も増加した。雑誌は、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数が減少を続け、4年連続の2桁減。
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