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紙の出版販売金額今年上期は7・5%減/コロナ特需の終息で苦戦/出版科研調べ
日時: 2022/11/11 17:19:02
情報元: 日書連

出版科学研究所は2022年上半期(1〜6月)の書籍・雑誌分野別動向をまとめた。これによると紙の出版物の推定販売金額は5961億円で前年同期比7・5%減となった。内訳は書籍が同4・3%減の3526億円、雑誌が同11・8%減の2434億円。電子出版市場は同8・5%増の2373億円になった。

〔主要ジャンルがいずれも前年割れに/書籍〕
書籍の販売金額は3526億円、前年同期比4・3%減。前年は新型コロナウイルス感染症拡大による巣ごもり需要で、販売金額は同4・8%増と好調に推移していた。今年はコロナ特需が終息。また2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に国際情勢が緊迫、エネルギーや食料品など様々な生活用品が値上がりしており、消費者に出版物の購入を見送る動きも出つつある。ベストセラーの部数水準が下がり、重版のかかりも鈍化している。ジャンル別の動向を見ると、文芸、ビジネス、文庫本、新書など主要ジャンルがいずれも前年割れに。これまで好調だった学参や児童書もマイナスで推移した。
販売部数は、同5・9%減の2億6935万冊。新刊平均価格は同1・2%増の1253円、出回り平均価格は同1・5%増の1262円だった。金額返品率は前年と同率の30・9%。推定出回り金額が同4・3%減と送品は減少傾向にあるが、店頭の販売不振から4月以降は返品が増加している。新刊点数は同5・5%減の3万2940点で、このうち取次仕入窓口経由が同1・1%減の2万3853点、注文扱いが同14・8%減の9545点。
22年上半期のジャンル別動向を見ると、文芸書は前年同期より約13%減。第166回直木賞受賞の米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA、24万部)は21年末の4大ミステリランキングで全て1位を獲得して話題を集めたが、1月の受賞でさらに売り伸ばした。同じく直木賞受賞の今村翔吾『塞翁の盾』(集英社)も春頃まで売れ続け17万部を突破した。22年本屋大賞受賞の逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房、46万部)は、ノミネート前から高評価を得て売れていたが、第二次大戦の独ソ戦を題材にしていることから、ロシアのウクライナ侵攻も影響して売行きを伸ばした。ビジネス書は約10%減。ロングセラーを中心に一部タイトルに売行きが集中したが、新たに牽引する作品や中規模ヒット作が少なかった。文庫本は約5%減。20年、21年は既刊が健闘したが、今年はその動きも落ち着き、全般に低調だった。児童書は約3%減。前年は巣ごもり需要が継続し、絵本、図鑑、読み物など全ジャンルがよく売れていたが、今年は売行きが鈍化した。

〔コミックスの落ち込みが響き2桁減/雑誌〕
雑誌の販売金額は2434億円で前年同期比11・8%減。内訳は、月刊誌が同12・8%減の2033億円、週刊誌が同6・3%減の401億円。月刊誌の内訳は定期誌が同約5%減、ムックが同約1%減、コミックスが同約26%減で、コミックスの落ち込みが全体を引き下げた。
コミックスは『呪術廻戦』(集英社)、『東京卍リベンジャーズ』(講談社)など大ヒットが出た前年から大幅減となったが、コロナ前の19年は上回っている。定期誌は、送品ベースでは大幅減が続くが実売率は改善傾向で、販売金額の落ち込みは緩やかになっている。ムックはコロナ禍前の水準には及ばないものの、主力の旅行ガイドが国内版を中心に回復し、小幅減となった。
推定発行部数は同13・9%減。内訳は、月刊誌が同15・4%減、週刊誌が同9・5%減。推定発行金額は同10・6%減で、月刊誌は同11・2%減、週刊誌は同7・5%減だった。平均価格は同3・8%(23円)増の621円で、業量減少や運賃の問題に加えて、用紙代の高騰など諸経費がかさみ一段高となった。
金額返品率は同0・8ポイント増の41・3%で、月刊誌が同1・1ポイント増の40・9%、週刊誌が同0・7ポイント減の43・3%。週刊誌は改善傾向が顕著で、月刊誌も、コミックスが大幅に悪化したが、定期誌のみでは改善している。
創・復刊点数は同3点増の22点。このうち半数以上の13点が分冊百科。月刊誌の創刊は1点もなかった。休刊点数は同6点減の55点。戦前からの歴史を持つ歌舞伎専門誌『演劇界』(発行/演劇出版社、発売/小学館)や、週刊誌『NHKウィークリーステラ』(NHKサービスセンター)などが休刊した。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が同56点減の1385点、ムックは同137点減の2882点。1号を1点とした付録添付誌数は同126点減の4716点。

〔紙+電子の出版販売額は3・5%減〕
電子出版の市場規模は2373億円で前年同期比8・5%増となった。内訳は、電子コミック(電子コミック誌含む)が同10・2%増の2097億円、電子書籍が同0・4%減の230億円、電子雑誌が同13・2%減の46億円。
コロナ禍の巣ごもり需要で増加したユーザー数の伸びが落ち着き、市場は成熟期に入ったと出版科学研究所は指摘する。コミックは、メガヒット作品は少なかったものの「ピッコマ」「少年ジャンプ+」「LINEマンガ」などマンガアプリの売行きが好調。特に縦スクロールコミックの伸びが大きく、出版社だけでなくゲーム会社など異業種からの参入も相次ぐ。書籍は前年実施のストアのセールの影響で微減となったが、ライトノベル、写真集などは好調だった。雑誌は定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数減少で、2桁の落ち込みが続く。
上半期の紙と電子の市場を合わせると8334億円、同3・5%減。市場全体における電子出版の占有率は28・5%になった。
メンテ

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