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第20回「2023年本屋大賞」/凪良ゆう氏『汝、星のごとく』/20年に続き2度目の栄冠
日時: 2023/05/23 18:09:06
情報元: 日書連


全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ第20回「2023年本屋大賞」の発表会が4月12日に東京・港区の明治記念館で行われ、凪良ゆう氏の『汝、星のごとく』(講談社)が本屋大賞に輝いた。凪良氏の受賞は20年の『流浪の月』に続き2度目で、本屋大賞を2回受賞したのは05年、17年受賞の恩田陸氏以来2人目。
受賞作は、瀬戸内の島で高校時代に出会った男女の約15年間の恋愛と成長を描いた作品。凪良氏は、「コロナ初年度と呼ばれる年に『流浪の月』で賞をいただいたが、発表当日が緊急事態宣言と重なり、歴代の受賞者の中でたった1人この会場にすらたどり着けなかった受賞者になってしまった。その時に応援してくれた書店員さんに直接お礼が言えなかったことと、同じ場所で喜びを分かち合えなかったことが、この3年間ずっと悔いになって残っていた」と初めて受賞した当時の心境を打ち明けた。
昨年『汝、星のごとく』を刊行した際、多くの書店を訪問したという。「『ずっと応援していました』と言葉をかけていただき、会場には行けなかったけど、こんなにたくさんの書店員さんが応援してくれているんだと思ったら、もうこれでいいと納得した。だから、今日再び受賞者としてこの場に立っていることが夢のようにうれしい。でも、これは物語を愛する書店員さんが作ってくれた現実です」と涙ながらに喜びを語った。
今回の本屋大賞は、21年12月1日から22年11月30日に刊行された日本の小説が対象。1次投票には471書店から615人が参加、1人3作品を選んで投票し、上位10作品をノミネート。2次投票では333書店422人が10作品を読んだ上で全てに感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票した。
本屋大賞の2位以下は次の通り。
(2)『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒(集英社)(3)『光のとこにいてね』一穂ミチ(文藝春秋)(4)『爆弾』呉勝浩(講談社)(5)『月の立つ林で』青山美智子(ポプラ社)(6)『君のクイズ』小川哲(朝日新聞出版)(7)『方舟』夕木春央(講談社)(8)『宙ごはん』町田そのこ(小学館)(9)『川のほとりに立つ者は』寺地はるな(双葉社)(10)『#真相をお話しします』結城真一郎(新潮社)
〔クリス・ウィタカー氏の『われら闇より天を見る』/本屋大賞翻訳小説部門〕
翻訳小説部門は、『われら闇より天を見る』(クリス・ウィタカー著、鈴木恵訳、早川書房)が選ばれた。無法者を自称する少女ダッチェスと警察署長のウォークが、30年前に起きた悲劇に端を発する事件の真相を追う。翻訳者の鈴木氏は「この作品はミステリー小説だが、世の中の全てを敵に回して戦おうとする13歳の少女の成長物語であり、過ちを犯した男の贖罪の物語でもある。特にダッチェスのキャラクターが秀逸で日本の読者の心にも長く残ると思う」と述べた。
ビデオメッセージでウィタカー氏は、20年前に強盗に刺され、セラピーとして文章を書き始めたことを明かして、「この小説は、ダッチェスのキャラクターから始めた。私は自分の気持ちを書き出し、自分の身に起こった悪いことの影で生きてもがき苦しんでいる女の子に重ねた。自分の人生が変わるようにと願いながら。この小説は、私にとって非常に身近な物語であるだけでなく、どんなに人生が困難であっても、ポジティブな変化を起こすことは可能であることを思い出させてくれる物語でもある」と語った。
また、既刊本の掘り起こしを目的に、21年11月30日までに刊行された作品を対象に投票する「発掘部門」の中から、本屋大賞実行委員会が選出した「超発掘本!」として『おちくぼ姫』(田辺聖子著、角川文庫)が発表された。「落窪物語」を題材に、おちくぼ姫と青年貴公子の恋を描いた「王朝版シンデレラ物語」。KADOKAWA文芸・映像事業局角川文庫編集部、角川文庫日文編集長の佐藤愛歌氏が、田辺聖子氏の姪・田辺美奈さんのコメントを代読。その中で田辺さんは「伯母は日本の古典を若い人に読んでもらいたいと常日頃話しており、古典の面白さを分かりやすく伝えるため、特に若い方に向けてたくさんの作品を残した。もし伯母が推薦コメントを読んだら、大変喜んだと思う」と述べた。
メンテ

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