出版科研調べ、紙の出版販売金額/今年上期は8.0%減/巣ごもり終息、物価高が影響
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- 日時: 2023/11/04 16:46:38
- 情報元: 日書連
- 日本出版販売(日販)調べの6月期店頭売上は前年比8・1%減だった。雑誌は同7・0%減、書籍は同5・3%減、コミックは同13・1%減、開発品は同5・1%減と全ジャンルで前年割れとなった。
書籍では、学参が21年7月以来、約2年ぶりの前年超え。『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』が売上を牽引した。コミックは、前年同月に「東京卍リベンジャーズ28」「キングダム65」が発売された影響などで、前年を大きく下回った。
[文芸書、ゲーム攻略本などがプラス/書籍] 紙の出版物の動向をみると、書籍の販売金額は3284億円、前年同期比6・9%減。書籍は出版物の買い控えが顕著に表れ、四半期別の販売金額では1〜3月期は同5・5%減、4〜6月期は同9・0%減と、月を追うごとに減少幅が拡大した。リアル書店店頭の売行きは毎月5%以上の減少が続くなど厳しい状況。Amazonなどネット書店の販売も伸び悩んだ。文芸書は村上春樹の長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)の発売もあって健闘。「ポケモン」関連が売れたゲーム攻略本や、国内ガイド本の需要が高まった旅行ガイドがプラスになったが、その他の主要ジャンルは全て大きく落ち込んだ。 推定販売部数は、同8・5%減の2億4639万冊。新刊平均価格は同4・9%(62円)増の1315円、出回り平均価格は同1・8%(23円)増の1285円だった。特に新刊平均価格の上昇が大きく、21年は2・8%増、22年は2・2%増と2%程度の増加で推移していたが、22年に値上げを検討していた出版社が今年一気に定価改定する動きがみられた。金額返品率は同1・9ポイント増の32・8%。返品率は15年から21年にかけて毎年減少を続け、22年は0・1ポイントの微増と、長らく改善傾向にあったが、23年は販売不振で返品が急激に増加。1〜6月でみると全ての月が前年より増加した。 新刊点数は同2・8%(933点)減の3万2007点で、このうち取次仕入窓口経由が同1・1%減の2万3139点、注文扱いが同7・1%減の8868点。新刊推定発行部数は同3・6%減、推定発行金額は同1・2%増で、平均価格が同4・9%上昇したことにより発行金額は前年を上回った。発行部数ベースでみると、文庫本は同6・0%減、新書本は同5・9%減といずれも初版を大きく抑えている。一方、絵本は同3・6%増。ヨシタケシンスケ、柴田ケイコなど人気作家の新刊や、ほるぷ出版のしかけ絵本が大部数で刊行され、プラスになった。 23年上半期のジャンル別動向をみると、文芸書は微増。4月に初版30万部で発行された村上春樹の『街とその不確かな壁』は、3刷38万部に。本屋大賞受賞の凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)は40万部を突破。書店員の後押しやプロモーション効果で、宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)は新人作家の作品ながら累計7万5千部と注目された。ビジネス書は約10%減。『人は話し方が9割』(すばる舎、19年刊)や『運動脳』(サンマーク出版、22年刊)などが前年に続いて売れたが、新たに牽引するタイトルが少なかった。文庫本は約5%減。東野圭吾『クスノキの番人』(実業之日本社文庫)、湊かなえ『カケラ』(集英社文庫)など定番人気作家の作品が売れたが低調だった。新書は約8%減で、前年に好調だったシニア向け生き方本の勢いが落ち着いた。児童書は約5%減。鈴木のりたけの絵本『大ピンチずかん』(小学館)が34万部とヒットしたが、読み物などその他の分野が苦戦した。
[週刊誌返品率は過去最高の46.0%] 雑誌の推定販売金額は2197億円で前年同期比9・7%減。内訳は、月刊誌が同9・6%減の1839億円、週刊誌が同10・6%減の358億円。月刊誌の内訳は、定期誌が約8%減、ムックが約9%減、コミックス(単行本)が約12%減。コミックスは約26%もの減少を記録した前年同期からさらに1割以上落ち込んだ。 推定販売部数は同14・2%減の3億3915万冊。内訳は、月刊誌が同13・9%減の2億5260万冊、週刊誌が同15・0%減の8655万冊。一方、平均価格は同4・8%(30円)増の651円。内訳は、月刊誌が同5・0%(35円)増の733円、週刊誌が同5・2%(21円)増の425円。原材料や流通コストの増加、付録のリッチ化もあって平均価格が大幅に上昇しているため、推定販売部数の減少幅は推定販売金額より大きくなっている。定期誌は好調なジャンルはなく、特定のアイドルや付録など、熱心なファンやお得感に反応した読者が購読するという形で、単発で売れる傾向がますます強まっている。コミックスは『ブルーロック』(講談社)や『【推しの子】』(集英社)などアニメ化でブレイクした作品は登場したが前年には及ばず。 金額返品率は同1・4ポイント増の42・7%で、内訳は月刊誌が同1・1ポイント増の42・0%、週刊誌が同2・7ポイント増の46・0%。月刊誌はコミックスの好調で20年に40%を切るなど減少傾向にあったが、21年以降は再び増加に転じ、19年並みに戻った。週刊誌は過去最高の返品率を記録した。 創復刊誌点数は同8点減の14点。休刊誌点数は同14点減の41点だった。『週刊ザテレビジョン』(KADOKAWA)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などが休刊した。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が同1・9%(27点)減の1358点、ムックは同7・4%(214点)減の2668点。1号を1点とした付録つき雑誌の点数は同2・2%(103点)減の4613点。雑誌扱いコミックスの新刊点数は同1・0%(46点)増の4580点。
[電子出版は7.1%増と堅調に推移] 電子出版の市場規模は2542億円で前年同期比7・1%増となった。内訳は、電子コミック(電子コミック誌含む)が同8・3%増の2271億円、電子書籍が同0・4%減の229億円、電子雑誌が同8・7%減の42億円。市場全体における電子出版の占有率は31・7%。 20年から21年にかけての巣ごもり特需は完全に終息し、コミックは1桁後半の成長、書籍は前年並み、雑誌は漸減という傾向が22年から続いている。コミックは、各ストアの販売施策やオリジナル作品の強化、縦スクロールコミックの伸長などで成長が続く。書籍は、写真集やライトノベルが好調だった一方、文芸、自己啓発、新書、ビジネス書等は伸び悩んだ。雑誌は、定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員減少がゆるやかになり、マイナス幅は1桁に収まって若干落ち着きを見せた。
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