22年児童書販売額は923億円/前年比減もコロナ禍前上回る/出版科学研究所
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- 日時: 2023/11/04 16:49:18
- 情報元: 日書連
- 出版科学研究所発行の『季刊出版指標2023夏号』は「児童書マーケットと読書推進活動」を特集した。これによると、2022年の児童書の推定販売金額は前年比4・6%減の923億円。前年対比ではマイナスになったが、コロナ禍以前の19年との比較では4・9%増と上回った。
2022年の児童書の推定販売金額は前年比4・6%減の923億円で、18年〜21年にかけてプラス成長を続けていたが、22年は前年割れとなった。ここ2年、成長が続いていた絵本が同3・4%減の341億円となったほか、学習漫画、図鑑、読み物などもマイナスになった。この減少は、20年、21年と続いたコロナ特需の終息が大きく影響した。20年の学校一斉休校を契機に、子どもの在宅時間が増加し、親が教育的観点から絵本、読み物、図鑑などの児童書を買い求める動きが強まり、販売金額は伸張。しかし感染状況が落ち着いてきた22年は、外出や旅行などの出費が増加。さらに急激な物価高も重なって、本を買い控える傾向が児童書にも表れた。ただ、コロナ禍前の19年と比較すると、児童書全体で4・9%増、絵本は9・3%増と伸びており、需要は底堅さを見せている。 22年に児童書を刊行した出版社は404社で、前年より36社増加した。6月にワン・パブリッシングが雑学読み物で、12月にライツ社が絵本で新規参入した。出版社数は、17年が380社、18年が398社、19年が427社、20年が384社、21年が368社と、おおむね400社前後を維持している。 22年の児童書全体の新刊点数は4465点、前年比0・4%増と前年並だった。点数の内訳は、絵本が同1・1%減の1944点、読み物などその他が同1・6%増の2521点。取次仕入窓口経由に限った新刊点数は同0・4%増の3529点となった。 推定発行部数は同4・7%減の2215万冊。推定発行金額は同6・0%減。平均価格は同1・3%減の1175円。前年に本体12万円の高額セット商品『総合百科事典ポプラディア第三版』(ポプラ社、全18巻セット)が発売されたこともあって、全体の平均価格は下がった。しかし印刷用紙代高騰の影響が大きく、絵本などを各社が値上げする動きが続いている。 22年に最も売れた絵本は、前年に続き『パンどろぼう』(KADOKAWA、20年刊)だった。22年9月にはシリーズ第4弾『〜おにぎりぼうやのたびだち』とレシピ本『パンどろぼうのせかいいちおいしいパンレシピ』が発売になり、いずれも即重版がかかった。12月には「ぬいぐるみポーチパスケース」が付いたムック『パンどろぼうMOOK』も発売。9月時点でシリーズ累計100万部を突破し、その後12月には160万部、今年6月には180万部に達した。 「ノラネコぐんだん」(白泉社)は22年に10周年を迎え、シリーズ累計250万部を突破。11月に新刊『ノラネコぐんだんうみのたび』が発売され、同時に10周年記念フェアが書店で大々的に実施された。人気絵本作家・ヨシタケシンスケは22年も勢いがあり、4月から全国巡回の大規模個展を初めて実施し、既刊の売行きも伸長。3月には新刊絵本『かみはこんなにくちゃくちゃだけど』(白泉社、13万部)を発売。その後、7月に又吉直樹との共著『その本は』(ポプラ社)、12月にエッセイ『日々臆測』(光村図書出版)を出版した。 ロングセラー作品は、ロシアのウクライナ侵攻後、長引く戦況もあって、ウクライナやロシアの民話から生まれた『てぶくろ』(65年刊、334万2千部)や『おおきなかぶ』(66年刊、335万部)など福音館書店のロングセラーや戦争に関するメッセージ性の高い絵本が注目された。また、『ぐりとぐら』(福音館書店、67年初版刊行、561万9千部)シリーズの挿絵を手がけた山脇百合子が9月に逝去。年末にかけて売行きが伸びた。 その他のジャンル動向では、読み物は全体的に不振だったが、21年に続き「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」(偕成社、13年より刊行)が好調。20年9月よりNHKEテレで放送中のアニメの人気が奏功し、シリーズ18巻までの累計部数は420万部を突破した。22年に刊行35周年を迎えた「かいけつゾロリ」(ポプラ社)は、7月に第71巻が発売され、児童書シリーズの最多巻数としてギネス世界記録に認定された。 23年上半期(1〜6月)の児童書の店頭販売実績をみると約5%減で、書籍全体の傾向と同様に低調だった。最も売れたのは、鈴木のりたけの絵本『大ピンチずかん』(小学館、22年2月刊行)で、「MOE絵本屋さん大賞2022」など絵本賞8冠を達成し、現在16刷34万部と非常に勢いがある。絵本では、いぬいさえこ『きみのことがだいすき』(パイインターナショナル)が著者のSNSから人気に火が付き、大人の読者からの人気が高く28万部に到達した。図鑑では『図解はじめての絵画』(小学館)が20万部を突破した。
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