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【 紙との補完関係目指す 】
日時: 2010/08/18 07:56:50
情報元: 日書連

 東京組合が6月2日に開いた「書店のための出版研修会」で、講談社・吉羽治ライツ事業局長が「講談社の書籍デジタル化に向けた取り組み」を講演した。

同社は今年、五木寛之『親鸞』上巻全文ネット無料公開、京極夏彦『死ねばいいのに』電子書籍版配信などの試みを行っている。

講演の概要は以下の通り。

     * 五木寛之氏からの申し出もあり、5月12日から1ヵ月間期間限定で『親鸞』上巻のネット無料公開を実施した。

65万部出ている本の上巻だが、無料公開をきっかけに「1人でも多くの読者に読んでもらいたい」という提案だ。

講談社としても売り伸ばしができればとの思いで取り組んだ。

 また、5月28日にiPadが日本発売されたのと同時に、京極夏彦氏『死ねばいいのに』電子書籍版のiPad向け販売を始めた。

京極氏は「出版社の役割、本の良さを守っていきたい。

出版社が積極的に電子書籍に取り組んでもらわねば市場が荒れてしまう」と考えている。

 『親鸞』『死ねばいいのに』は、電子書籍が話題を集めている中における実験的な取り組みと理解していただきたい。

同様の形で次から次へと新刊を電子化してiPad向けに販売することは、現時点ではない。

アマゾンとアップルの日本における動向や、ソニーなど国内勢の具体的な動きが明確ではない現状では、環境が整っていないと認識せざるを得ない。

読者が電子化された本をどう受け止めるかを探っている状況だ。

 講談社は、紙とデジタルの良い形での補完を目指すという考えをベースに持っている。

新たなチャンネルを開拓して新たな読者を獲得し、市場の活性化につなげたい。

 「版元不要論」にも対抗しなければならない。

内外IT事業者による版元飛ばしを警戒している。

日本語の縦組み・右開き文化軽視にも危機感を持っている。

米国の標準仕様ePubでは漢字とひらがなの間が空いてしまったり、日本語がきれいに表示されない。

これは出版社にとって耐えがたいこと。

ePubが電子書籍の唯一の仕様にならないようにしたい。

 紙とデジタルの補完関係を目指すのは簡単なことではないが、講談社にはモバイルFRIDAYやケータイコミックでの経験がある。

本誌の部数に影響がなかったことで、モバイルの読者は紙の読者とは異質であることを認識できた。

 デジタル化を進めながら同じ作品を書店店頭で買ってもらい、書店店頭でなければ手に入らない商品を開発していく。

この両輪を進めることが出版社として必要だと考えている。

メンテ

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