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【 「出版人の責務」確認の場に 】
日時: 2011/06/02 17:26:44
情報元: 日書連

第50回全出版人大会が5月13日午後3時から千代田区のホテルニューオータニで開催され、長寿者表彰で日書連から鈴木喜重副会長(千葉)、木野村祐助副会長(岐阜)、OBの下向磐元副会長(東京)、奥村弘志元副会長(東京)、今西英雄元副会長(大阪)の各氏が表彰された。

 式典では冒頭で上野徹大会会長代行(文藝春秋)があいさつ。

「出版界はこのところ活字離れが言われ、その規模を縮小してきた。

加えて昨年来具体化してきたデジタル化の波も、私たちに様々な変革を求めている。

しかし、この大震災の中で私たちは活字の持つ力を確信した。

この試練は私たちに、受身ではなく新しい未来の形を作り上げよという、明日に向かっての取り組みを要求しているのではないか。

この第50回大会が、その挑戦に真正面から向き合う確認の場になればと願っている」と述べた。

 山下秀樹大会委員長(集英社)は「我々日本人には苦難を乗り越える知恵と底力が備わっている。

震災の被害を乗り越え、少子高齢化、脱経済成長の大きな波を正面から受け止め、その上で幸せな社会を築いていくことが、いま我々に提案されている一大テーマではないか」とし、大会声明を朗読、拍手で採択した。

 来賓の林久美子文部科学大臣政務官、長尾真国立国会図書館館長からの祝辞、菅直人首相からのメッセージ代読に続き、相賀昌宏〈大震災〉出版対策本部常任委員会委員長(小学館)が「緊急アピール 出版対策本部の理念」を朗読。

長寿者49名と永年勤続者372名の表彰を行い、江草忠敬大会副会長(有斐閣)が祝辞を述べた後、長寿者代表の彰国社・後藤武社長と永年勤続者代表の文英堂・平林郁子氏が表彰状と記念品を受け取った。

  【大会声明】  第五十回記念大会の声明を、哀悼とお見舞いの言葉ではじめなければならないことは、痛恨の極みです。

 三月十一日の東日本大震災で亡くなられた方がたのご冥福をお祈りし、被災地域の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 この度の大震災は巨大津波による原発事故と相俟って、日本人が戦後はじめて遭遇する緊急事態となりました。

出版界は無論のこと、製紙をはじめ出版を支える多くの企業の皆さまも大きな被害を蒙りました。

地域の書店の被害も甚大で、言葉を失うほどでした。

今も大きな困難に直面しながら、懸命の復旧、復興努力を続けておられますが、あれから二ヶ月、被災地域の皆さまは力強い精神力を発揮され、営業再開など愁眉を開く朗報も、日を追って多くなっています。

その不屈の精神に感服せざるを得ません。

 私達も怯んではいられません。

今回の災害では、長期的な支援が求められます。

これからも出版界が心をひとつにして、その底力を発揮していかなくてはなりません。

業界あげて対応すべく、迅速に設置された「大震災出版対策本部」「連絡協議会」の活動も、その決意を示すものです。

 出版物は、人びとの心の中にある明日への活力を鼓吹する力を持っています。

一冊だけの少年まんが誌が、百人を超えるこども達に回し読みされたという報道もありました。

人は衣食住の確保の次には、ことば、物語、本を必要とするのだと、改めて確信しました。

私達が届けた何万冊かの絵本、児童書、書籍、雑誌も、不安の中で努力を続けておられる人びとの心を支えるために、その力を発揮していると信じます。

 出版物はまた読む者の精神を鍛え、知性の分布を拡大する社会的資本です。

そして読書という学びは、先賢の叡智を魂に取り込み、思考、経験のプロセスを経て人間の精神をはぐくむ普遍的な価値です。

 ならば、ことばを扱う者、出版に携わる者の責務は自から明らかです。

時がたち、人びとがふたたび笑顔を取り戻した時、忍耐と思いやりと勇気の記録と物語が数多く編まれなければなりません。

 また検証と提言も、活字として届けられなければなりません。

被害を最小限にくい止める術はなかったのか? 被災した人びとの苦難をもっとやわらげる知恵はなかったのか?  自然への畏敬を忘れてはならない、という謙虚な姿勢から提案される新しい世界観も、書物となって立ち現れるはずです。

それが今回の被災地の人びとの悲嘆を、再生への意欲を、無に帰させないための私達の使命だからです。

 私達は今あらためて出版人の責務を思い、誰もが願う「安らかで幸せな社会」の実現に、出版という地平から努力を続けることを誓って、大会声明といたします。

平成二十三年五月十三日  第五十回 全出版人大会
メンテ

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