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コミック市場、3・5%減の3766億円/『出版月報』コミックレポート
日時: 2013/04/12 17:42:22
情報元: 日書連

出版科学研究所発行の『出版月報』2月号は「コミック市場2012」を特集。これによると、昨年のコミックス(単行本)、コミック誌を合わせた推定販売金額は前年比3・5%減の3766億円で、11年連続の前年割れになった。同レポートからコミック市場の動向を紹介する。

〔単行本販売額は20年前の水準〕
コミックスの推定販売金額は前年比2・3%減の2202億円。推定販売部数は同3・6%減の4億3584万冊で、金額・部数ともに2年連続のマイナスだった。
10年、11年は『ONEPIECE』が驚異的なヒットを飛ばし、12年はその反動で大幅減が予想されたが、『銀の匙』『暗殺教室』などのヒット作品の登場や、スクウェア・エニックスを中心としたアニメ化作品・Webマガジン発の売行き良好作品などに支えられ、比較的小幅な減少にとどまった。しかし、新たな人気作品は誕生しているものの、販売金額は20年前の水準に戻っている。また、『エア・ギア』『範馬刃牙』など多くの長期連載人気作が完結し、その他の長尺物の既刊も売行きが鈍化するなど、不安要素も多くみられたと出版科学研究所は指摘している。
平均価格は前年比6円(同1・2%)増の504円。講談社が12月から「週刊少年マガジンKC」を10円アップさせる定価改定を行った。返品率は同1・0ポイント増の28・1%と2年連続増加した。
新刊点数は前年より335点増加して1万2356点。100点以上の大幅増は4年ぶりとなった。雑誌扱いコミックスのみでは同248点増加の9376点と2年連続で大きく点数を伸ばした。書籍扱いコミックスは同87点増の2980点とプラスに転じた。ライトノベル、アニメのコミカライズ、スピンオフが前年に引き続き増加している。
コミック文庫は、推定販売金額が前年比4・9%減の64億円、推定販売部数が同5・4%減の957万冊となり、部数は1千万冊の大台を割った。新刊点数は前年より84点少ない446点で5年連続の減少。『るろうに剣心』『ヒカルの碁』など90年代末の作品の文庫化が目立っている。
廉価軽装版の推定販売金額は前年比1・4%減の216億円。推定販売部数は同2・4%減の4560万冊となった。新刊点数は同5・7%減の1402点と2年ぶりのマイナス。めぼしい有名作はあらかた廉価版になっており、コンテンツ不足が深刻になっている。

〔コミック誌、17年連続マイナス〕
コミック誌の推定販売金額は前年比5・2%減の1564億円。推定販売部数は同6・4%減の4億8303億冊と5億冊を切り、17年連続のマイナスになった。月刊誌・週刊誌別にみると、販売金額は月刊誌が同5・3%減の769億円、週刊誌が同5・2%減の795億円で、月刊誌・週刊誌ともに800億円を割った。販売部数は月刊誌が同7・4%減の1億7765万冊、週刊誌が同5・8%減の3億538万冊。
販売金額を読者対象別にみると、子ども向けは前年比3・1%減の778億円、大人向けは同6・5%減の786億円と大人向けの落ち込み幅が大きかった。大人はコミック誌を読む習慣がなくなり、スマートフォンのゲームなど他の娯楽を楽しむようになったとみられる。
推定発行金額は前年比3・2%減の2358億円、推定発行部数は同4・8%減の6億8924万冊となり、販売不振による部数の引き締めが続いている。部数を月刊誌・週刊誌別にみると、月刊誌は同4・5%減の2億9556万冊、週刊誌は同5・1%減の3億9369万冊。
月刊誌では、『コロコロコミック』が類誌との競合激化で60万部台前半まで部数が減少。大人向けでは高齢向けの雑誌は部数を伸ばしたものの、それ以外の雑誌は軒並み部数を落とした。週刊誌の少年向けで、かろうじて前年並みを保っているのは『週刊少年ジャンプ』のみ。青年向けの週刊誌はいずれも厳しく、部数が減少している。
平均価格は前年比6円(1・8%)アップの342円。内訳は月刊誌が同10円(2・4%)アップの442円、週刊誌は同2円(0・8%)アップの267円。『りぼん』が定価を20円アップさせるなど、コミック誌も価格を上げて販売不振を補おうとする傾向にある。
12年12月末時点での月刊誌・週刊誌を合わせた発行銘柄数は前年より7点減の288点となった。創刊誌は前年より6点少ない9点、休刊誌は同4点多い14点で、休刊点数が創刊点数を上回った。個性的な増刊・別冊が今年も刊行されており、不定期誌を才能発掘の場とすることも多くなっている。

〔読者に作品を伝える工夫を〕
推定販売金額におけるコミックスとコミック誌の比率は58・5対41・5となり、その差は17・0ポイントまで広がった。「雑誌で連載を追いかけるより、単行本でまとめて読む」という読者の志向が一段と進んでいる。
読者と作品が出会う最大の場であったコミック雑誌が凋落している現在、新たな出会いのきっかけを創造していく必要がある。書店の限られたスペースの中で、とにかく読者に第1巻を手に取ってもらえる工夫を考えることが重要になる。
一方、無料Webマガジンやスマートフォンによる電子コミックが伸長し、紙媒体とは異なる形で活気を見せている。「読者と作品の最適な出会いの形は何か、を第一義に考え、従来の形式にこだわらないコンテンツ配信の方法を模索する必要がある」と出版科学研究所はまとめている。
メンテ

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