出版販売金額4・5%減少/増税の影響で過去最大の落ち込み/出版指標年報
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- 日時: 2015/06/19 22:07:32
- 情報元: 日書連
全国出版協会・出版科学研究所が発行した『2015年版出版指標年報』によると、2014年の取次ルートを経由した出版物(書籍・雑誌)の推定販売金額は前年比4・5%減の1兆6065億円となった。内訳は、書籍が同4・0%減の7544億円、雑誌が同5・0%減の8520億円。消費税増税の影響で出版物への支出が抑制され、販売金額は1950年の統計開始以来最大の落ち込みを記録した。
〔ベストセラーの部数水準が低下/書籍〕 書籍の推定販売金額は7544億円、前年比4・0%減少し、8年連続のマイナスになった。4%以上の下落は09年の4・4%減以来。これまでミリオンセラーの続出や、文庫本など価格の安い本の需要が底堅いこともあって、書籍の売上は比較的堅調だった。しかし4月の消費税増税の影響は想像以上に大きく、読者の購買マインドの冷え込みで販売状況は急速に悪化、年後半になっても復調しなかった。 ミリオンセラーは、出版科学研究所の年間単行本総合ランキングではゼロ。集計対象外の実用書では唯一『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム)が100万部に達した。2000年代以降、最低1作はミリオンセラーが登場しており、14年は上位作品にも勢いがなかったことがわかる。全体を牽引する売れ筋商品が乏しく、ベストセラー商品の部数水準も例年を大きく下回った。 推定販売部数は前年比4・8%減の6億4461万冊と、金額以上にマイナス幅が大きく、4%以上の下落は09年の4・5%減以来となった。増税後、読者の買い控え姿勢が文庫本などの廉価商品にもうかがえた。 金額返品率は前年比0・3ポイント増の37・6%。前年は0・5ポイント改善しており、取次各社は14年も新刊配本の引き締めを積極的に行ったが、増税による販売状況悪化がそれを上回る形になった。 新刊点数は7万6465点で前年比1・9%減。流通ルート別の内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同1・6%減の5万5162点、注文扱いの新刊が同2・6%減の2万1303点だった。新刊推定発行部数は同3・9%減の3億3561万冊で、文庫本、新書がともに6%以上の大幅減となったことが大きく影響した。 14年の書籍市場は、新トレンドや爆発的ヒットが不在で、各ジャンルとも苦戦を強いられた。特に文芸書は例年にない不振となり、本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』(新潮社、上・下計101万部)や村上春樹の短編小説集『女のいない男たち』(文藝春秋、40万部)、池井戸潤の『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社、60万部)など一部人気作家の作品が売行きを伸ばしても、市場全体への波及には結びつかなかった。 文庫本は読者の消費減退が最も顕著に表れたジャンルで、百田尚樹、池井戸潤、湊かなえ、東野圭吾といった人気作家作品に売行きが集中し、その他の既刊本は伸び悩んだ。 14年の単行本ベスト10は以下の通り。 (1)人生はニャンとかなる!/水野敬也・長沼直樹/文響社(2)村上海賊の娘(上・下)/和田竜/新潮社(3)銀翼のイカロス/池井戸潤/ダイヤモンド社(4)忍耐の法/大川隆法/幸福の科学出版(5)新・人間革命(26)/池田大作/聖教新聞社(6)学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話/坪田信貴/KADOKAWA(7)まんがでわかる7つの習慣/フランクリン・コヴィー・ジャパン監修、小山鹿梨子漫画/宝島社(8)面倒だから、しよう/渡辺和子/幻冬舎(9)置かれた場所で咲きなさい/渡辺和子/幻冬舎(10)嫌われる勇気/岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社
〔販売金額17年連続のマイナスに/雑誌〕 雑誌の推定販売金額は8520億円、前年比5・0%減で17年連続マイナスになった。内訳は、月刊誌が同4・0%減の6836億円、週刊誌が同8・9%減の1684億円。月刊誌は好調なコミックスの売上が含まれており、コミックスとムックを除いた定期誌の販売実績は約7%の下落となっている。 推定販売部数は前年比6・4%減の16億5088万冊と史上4番目の下落幅を記録。内訳は、月刊誌が同5・3%減の11億5010万冊、週刊誌が同8・9%減の5億78万冊で、週刊誌の不振が目立つ。 平均価格は前年比1・5%(8円)増の532円と値上がり傾向。月刊誌は同1・2%(7円)増の607円、週刊誌は同0・6%(2円)増の346円だった。 推定発行部数は前年比4・5%減の26億6832万冊、推定発行金額は同3・2%減の1兆4193億円と抑制されたものの販売は低迷し、金額返品率は同1・2ポイント増の40・0%と大幅に上昇した。 不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が前年比10・1%減の4193点、ムックが同1・4%減の9336点。定期誌の不振を補うためにムックの刊行強化が続いていたが、刊行点数の増加による販売効率の悪化を懸念して新刊点数を抑制する出版社も出てきた。 年間の創復刊点数は前年より1点増の87点で、3年連続で100点を下回った。創刊部数は同14・1%増。出版社の創刊意欲は減退しており、新企画は30代向け以上に集中している。 一方、休刊点数は前年より45点増の169点で、4年ぶりに大幅増となった。休刊部数は同196・1%増。インフォレストの『小悪魔ageha』などギャルファッション誌が軒並み休刊した。このため、雑誌の総発行銘柄数は同65点減の3179点となり、8年連続減少した。 電子書籍の市場規模は、インプレス総合研究所調べによると、13年度(14年3月期)で936億円で、前年比28・3%増。電子書籍の約8割を電子コミックが占める。電子雑誌77億円を加えた電子出版市場は1013億円となっている。
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