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出版販売金額5・3%減/雑誌不振で過去最大のマイナス/出版指標年報
日時: 2016/05/24 22:08:43
情報元: 日書連

全国出版協会・出版科学研究所が発行した『2016年版出版指標年報』によると、2015年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比5・3%減の1兆5220億円となった。内訳は、書籍が同1・7%減の7419億円、雑誌が同8・4%減の7801億円。出版物販売金額のマイナスは11年連続で、減少幅は昨年の4・5%減を上回り過去最大を記録した。

〔文芸書が貢献し小幅減に留まる/書籍〕
書籍の推定販売金額は7419億円、前年比1・7%減少した。消費税増税で大幅減となった14年に対し小幅な落ち込みにとどまったが、マイナスは9年連続となった。年間を通して各ジャンルでヒット作が生まれ、特に文芸書の健闘が光った。その中心となったのが又吉直樹『火花』(文藝春秋)で、7月に芥川賞を受賞して累計240万部超の大ヒットを記録。又吉氏が各メディアで紹介した文芸書もヒットするなど、書籍全体の販売増に貢献した。また、経済格差の実態を膨大なデータで実証した『21世紀の資本』(みすず書房)が高価格ながら14万部のヒットとなるなど、多様な本が売れた。その中で、娯楽的な要素が強い文庫本は不振が目立った。
ミリオンセラーは、出版科学研究所の年間単行本総合ランキングでは唯一『火花』が達成。対象外となる実用書、児童書、ゲーム攻略本などでも年内で100万部に達したタイトルはゼロだった。
推定販売部数は同2・8%減の6億2633万冊で、文芸書以外でもビジネス書、ノンフィクション、児童書、学参など好調ジャンルが多かったものの、文庫本の低迷が足を引っ張る形になった。
金額返品率は37・2%で同0・4ポイント改善。大ベストセラーが出た影響で販売状況が改善したことや、取次各社が新刊配本の引き締めを継続的に行っていることが奏功した。
新刊点数は7万6445点で前年と同率。内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同1・7%減の5万4235点、注文扱いの新刊が同4・3%増の2万2210点だった。取次仕入窓口経由の減少は3年連続で、特に新書の減少が目立った。新刊推定発行部数は同3・3%減の3億2466万冊で、文庫本、新書がともに5%程度減少したことが影響した。
15年の書籍市場は、各ジャンルから話題書やヒットが多く登場した。特に活況を呈した文芸書では、『火花』をはじめ、芥川賞同時受賞の『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)、直木賞受賞の『流』(講談社)、『サラバ!』(小学館)、本屋大賞受賞の『鹿の王』(KADOKAWA)など文学賞受賞作にヒットが続出。また、テレビドラマが大ヒットした『下町ロケット2』(小学館)や、ネット発の『君の膵臓をたべたい』(双葉社)などコンスタントに話題書が現れた。
ノンフィクションでは『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)が200万部に到達、『フランス人は10着しか服を持たない』(大和書房)が好調を続けるなど、自己啓発書は相変わらず高い人気を集めている。神戸連続児童殺傷事件の加害男性の手記『絶歌』(太田出版)は、出版の是非が問われるなど波紋を呼んだ。生活実用書は、『ひみつの花園』(グラフィック社)など大人の塗り絵がブームに。児童書は絵本や学習漫画、図鑑などが伸びて好調を持続し、特に絵本は『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)やブロンズ新社の作品などヒット作が相次いだ。
15年の単行本ベスト10は以下の通り。
(1)8火花/又吉直樹/文藝春秋(2)フランス人は10着しか服を持たない/ジェニファー・L・スコット/大和書房(3)家族という病/下重暁子/幻冬舎(4)智慧の法/大川隆法/幸福の科学出版(5)置かれた場所で咲きなさい/渡辺和子/幻冬舎(6)新・人間革命(27)/池田大作/聖教新聞社(7)一〇三歳になってわかったこと/篠田桃紅/幻冬舎(8)人間の分際/曽野綾子/幻冬舎(9)学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話/坪田信貴/KADOKAWA(10)鹿の王(上・下)/上橋菜穂子/KADOKAWA

〔18年連続減、過去最大の落ち込み/雑誌〕
雑誌の推定販売金額は7801億円、前年比8・4%減と18年連続の前年割れで、過去最大の落ち込みを記録した。内訳は、月刊誌が同7・2%減の6346億円、週刊誌が同13・6%減の1454億円。月刊誌は、コミックス、ムックを除く定期誌だけでは同7・9%減と、下落幅がさらに拡大する。
推定販売部数は同10・5%減の14億7812万冊と、1割以上のマイナスに。内訳は、月刊誌が同8・7%減の10億5048万冊、週刊誌が同14・6%減の4億2764万冊で、週刊誌の2桁減は初めて。
平均価格は同2・6%(14円)増の546円。月刊誌は同2・0%(12円)増の619円、週刊誌は同1・2%(4円)増の350円と値上がり傾向が続く。
推定発行部数は同7・9%減の24億5845万冊、推定発行金額は同5・5%減の1兆3414億円。金額返品率は同1・8ポイント増の41・8%で、売行きの悪化に対し供給調整が追いつかなかった。
不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同6・7%減の3918点、ムックが1・1%減の9230点。前年に続き、宝島社や学研プラスなど大手出版社で点数の抑制傾向が続いている。1号あたりを1点とカウントした年間の付録添付誌数は、同4・6%減の1万2377点で、付録も抑制する動きが見られた。
年間の創復刊点数は同17点減の70点で、100点を下回ったのは4年連続。創刊部数は同46・5%減。50代以上女性向けライフスタイル誌『おとなスタイル』(講談社)などが創刊した。一方、休刊点数は同52点減の117点で、休刊部数は同44・7%減。

〔前年比31%増の1502億円/電子出版〕
出版科学研究所は15年から電子出版の市場規模を調査範囲に加え発表。これによると15年の電子出版市場規模は1502億円で前年比31・3%増、金額で同358億円増加した。内訳は、電子コミックが同30・3%増の1149億円、電子書籍が同18・8%増の228億円、電子雑誌が同78・6%増の125億円。紙と電子の出版市場を合わせると1兆6722億円、同2・8%減。電子出版の占有率は9・0%で、同2・4ポイント増加した。
メンテ

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