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出版販売金額3・4%減少/雑誌の売上が書籍を41年ぶり下回る/出版指標年報
日時: 2017/06/01 18:09:01
情報元: 日書連

全国出版協会・出版科学研究所が発行した『2017年版出版指標年報』によると、2016年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比3・4%減の1兆4709億円となった。内訳は、書籍が同0・7%減の7370億円、雑誌が同5・9%減の7339億円。販売金額のマイナスは12年連続で、1兆4千億円台を記録したのは1981年以来。また、雑誌の売上が書籍を41年ぶりに下回った。

〔ベストセラー相次ぎ、小幅減に/書籍〕
書籍の推定販売金額は7370億円で、前年比0・7%減少。10年連続のマイナスとなったが、底堅さを示した。年間を通してコンスタントにベストセラーが生まれ、長期にわたって売れる作品が多かった。また、児童、実用、学参などが好調で前年を上回り、全体の伸びに貢献した。ベストセラーは、テレビなどメディアで紹介された本が中心になった。『天才』(幻冬舎)、『羊と鋼の森』、『コンビニ人間』(ともに文藝春秋)、『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』(サンマーク出版)、『君の膵臓をたべたい』(双葉社)、『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)など、社を挙げてPRを強化している出版社の書籍が息の長い売れ行きを示した。
ミリオンセラーは、出版科学研究所の年間単行本総合ランキングでは『ハリー・ポッターと呪いの子』(静山社)が唯一達成した。シリーズ8年ぶりの新刊で、11月に初版80万部で発行され、発売3日後にはミリオン到達となった。
推定販売部数は同1・4%減の6億1769万冊。価格上昇の影響で金額よりも減少幅が大きく、前年に続いて文庫本の不振が響いた。文庫本は3年連続で6%台の大幅なマイナスを記録し、市場の低落が目立っている。
金額返品率は36・9%で同0・3ポイント改善。店頭販売状況が堅調だったことと、新刊配本部数の適正化など取次会社の送品引締め策が功を奏し、2年連続で前年を下回った。
新刊点数は7万5039点で同1・8%(1406点)減。内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同1・3%減の5万3538点、注文扱いの新刊が同3・2%減の2万1501点だった。取次仕入窓口経由の減少は4年連続で、特に文庫本の減少が目立った。新刊推定発行部数は同0・8%減の3億2219万冊で、児童書や小中学生向け学参が大幅に伸びた。
16年の書籍市場は前年に続き各ジャンルでヒットが生まれた。文芸書は、田中角栄ブームをリードした『天才』が92万部に到達。芥川賞受賞の『コンビニ人間』は52万部、本屋大賞受賞の『羊と鋼の森』は50万2500部など文学賞受賞作にヒットが続いた。佐藤愛子、瀬戸内寂聴など高齢作家のエッセイも人気を博した。ビジネス書は全体的に不調で一部出版社に売れ筋が集中。『嫌われる勇気』など自己啓発書が幅広い層から支持を集めた。文庫本は低迷が続き、特に既刊が厳しい状況。東野圭吾、池井戸潤など定番の人気作家が変わらぬ強さを見せた。児童書は絶好調で、絵本ではヨシタケシンスケなど新進作家の作品が短期間で大部数を記録。学習漫画、児童文庫などにも売れ筋が多かった。
16年の単行本ベスト10は以下の通り。
(1)天才/石原慎太郎/幻冬舎(2)ハリー・ポッターと呪いの子第一部・第二部特別リハーサル版/J.K.ローリングほか/静山社(3)君の膵臓をたべたい/住野よる/双葉社(4)嫌われる勇気自己啓発の源流「アドラー」の教え/岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社(5)(正義の法/大川隆法/幸福の科学出版(6)羊と鋼の森/宮下奈都/文藝春秋(7)コンビニ人間/村田沙耶香/文藝春秋(8)新・人間革命(28)/池田大作/聖教新聞社(9)火花/又吉直樹/文藝春秋(10)言ってはいけない残酷すぎる真実/橘玲/新潮社

〔販売額5・9%減、19年連続の減少/雑誌〕
雑誌の推定販売金額は7339億円、前年比5・9%減と19年連続のマイナスを記録。書籍の売上を41年ぶりに下回った。内訳は、月刊誌が同5・3%減の6009億円、週刊誌が同8・5%減の1331億円。月刊誌は、ムック、コミックスを除く定期誌だけでは同4・6%減。ムックは同1・5%減、コミックスは同8・5%減だった。
推定販売部数は同8・0%減の13億5990万冊。内訳は、月刊誌が同7・3%減の9億7417万冊、週刊誌が同9・8%減の3億8573万冊。平均価格は同2・2%(12円)増の558円。月刊誌は同1・9%(12円)増の631円、週刊誌は同1・7%(6円)増の356円と上昇傾向が続く。
推定発行部数は同8・6%減の22億4658万冊で、ピークだった97年の51億8979万冊から約57%の減少となった。推定発行金額は同6・6%減の1兆2525億円。金額返品率は同0・4ポイント減の41・4%で、返品を大幅に絞ったことやコンビニエンスストアでの販売状況がやや持ち直したこともあり改善した。
不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同5・2%減の3713点、ムックが同4・3%減の8832点。1号を1点とカウントした年間の付録添付誌数は、同3・0%減の1万2000点と減少が続く。
年間の創復刊点数は同3点増の73点で、依然として分冊百科やパズル誌、アダルト誌が大半を占める。休刊点数は同8点多い125点で、『SEDA』や『Gainer』などメジャー誌の休刊が相次いだほか、『COURRiERJAPON』『デジモノステーション』など有料の電子版に完全移行する雑誌も見られた。

〔コミックは大幅増で高成長続く/電子出版〕
電子出版の市場規模は1909億円で、同27・1%増、金額で同407億円増加した。内訳は、電子コミックが同27・1%増の1460億円、電子書籍が同13・2%増の258億円、電子雑誌が同52・8%増の191億円。紙と電子の出版市場を合わせると1兆6618億円、同0・6%減。電子出版の占有率は11・5%で、同2・5ポイント増加した。
コミックは大手出版社、コミック専門出版社ともに大幅な伸長で高い成長を続けている。無料試し読みなど様々なPRが奏功した。書籍は未だ電子化に積極的ではない出版社が多く、点数は増加しているものの売上は伸び悩んでいる。雑誌は定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数増加に伴い、市場規模が大きく拡大した。
メンテ

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