「本業の復活」新中計で推進/本を起点に広がる可能性追求/日販懇話会
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- 日時: 2018/06/06 09:21:53
- 情報元: 日書連
- 日販は5月15日、東京・文京区の東京ドームホテルで2018年度日販懇話会を開き、会員書店、出版社など336名が出席。平林彰社長は17年度決算で取次事業が赤字に転落したことを明らかにし、「取次業は崩壊の危機にある」と危機感を示して、新しい中期経営計画で「本業の復活」を推進すると決意を語った。
平林社長は2017年度決算概況を報告。連結で減収増益、単体で減収減益になるとの見通しを示した。 連結営業利益は微増で、投資していく上での防衛ライン30億円を下回った。取次事業は大幅減益。小売事業が6年ぶりに10億円近い黒字に転換したことが増益に貢献した。 単体営業利益は大幅減益で10億円を下回った。取次事業は5億円を超える赤字に転落した。書店ルートは大幅減益、CVSルートは赤字幅が拡大している。商品別では、雑誌は約5億円と5年間で6分の1に縮小した。書籍は平林社長が入社してから30年以上赤字が続いているという。赤字の要因として、仕入条件、文庫など低定価商品のシェア拡大、返品率の高さをあげた。 平林社長は「雑誌の利益に依存してきた取次業は、誇張ではなく崩壊の危機にある。書籍はそもそも取次業として成立していなかった。取次業だけでは食べていくことができないところまできている」と強い危機感を示す一方で、「全国津々浦々に出版物を届けることに矜持を持っている。これからも日本の文化を形成する出版物を扱うことを本業とする会社でいたい」と決意を表明した。 目指す方向性として「書店と出版社に必要とされる取次業の追求を改めて真剣にやっていくこと」に言及し、「卸としての経済合理性」と「データによる企画提案」という存在価値を磨いていきたいと強調。「卸としての経済合理性は、書店と出版社の間に立って、回収、請求、精算、物流、情報のトランザクションが簡易にできること。直取引に負けない価値がここにはある。また、データによる企画提案は、網羅的に集まっているデータ自体に存在価値があり、出版社から見て店頭の在庫が見えることを実現している。これを価値と感じてもらえると信じている」と述べた。 そして、「本を起点に広がる可能性に挑戦する」をコンセプトに、今年4月からスタートした新たな中期経営計画「BuildNIPPANgroup2・0」を説明。基本方針は「本業の復活」で、取次事業と小売事業を本業と定義。「取次事業は一から作り直す。小売事業は私たちが考える儲かる書店、魅力ある書店を作り、取引先書店に提案する。文具、雑貨、エンターテインメント、映像への出資など、本業を支える周辺の事業も成長させたい」と述べた。 実現するためのキーワードとして、<1>「書店を増やす」…読者が本を手に取る場所を増やしていくために出店加速へ舵を切る。そのためには、書店が出店の投資をして、投資回収できるマージンが必要。既存店はリノベーションが必要、<2>「プロダクトアウトからマーケットインへ」…新刊はJPROに登録された近刊情報に基づいて予約。既刊は日販や出版社の在庫が書店から見える状態で、日販は満数配本し、書店は売り切るか返品の上限がある中で商売する、<3>「返品をもっと減らす」…買切や返品制限のある商売に変える。雑誌については返品現地処理化を模索する、<4>「在庫の見える化と確約」…日販在庫、出版社在庫、書店在庫のネットワーク化を進め、消費者からも見えるようにする、<5>「物流コストの圧縮」…流通センターの再編は避けて通れない。取次間で物流協業を拡大し、他産業との協業も模索する――の5つをあげた。 最後に、書籍の定価の問題で、同じ文庫本でも日本とアメリカでは平均定価に約1000円の差があることを例にあげ、「海外並みの定価に引き上げてほしい」と出版社に訴えた。 続いて、中西淳一執行役員が「『本』業の復活に向けて」、富樫建執行役員が「2018店舗イノベーション戦略」、大本佳奈・システム部ビジネスソリューション課係長が「AI選書サービスSeleBoo」と題してプレゼンテーションを行った。 この後、小松製作所・坂根正弘相談役が「日本と企業の課題〜コマツは日本の縮図〜」と題して記念講演を行った。
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