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連結決算は黒字転換/取次事業、3年連続営業赤字/日販GHD
日時: 2020/07/24 17:15:53
情報元: 日書連

日販グループホールディングス(日販GHD)は6月26日、2019年度(19年4月1日~20年3月31日)決算を発表した。日販グループ(連結子会社27社)の売上高は5159億2200万円(前年比5・5%減)。コミックスの増収が牽引するも、雑誌・書籍の店頭販売の落ち込みにより減収となった。営業利益は、グループ全体で固定費の削減に取り組んだ結果、24億7400万円(同141・0%増)。経常利益は24億4100万円(同125・2%増)となった。親会社株主に帰属する当期純利益は7億8100万円と黒字転換した(前年度は2億900万円の赤字)。
日販グループは19年10月1日に日販GHDを親会社とした持ち株会社体制に移行。グループにおける取次事業、特に日本出版販売(日販)の営業赤字が続く一方で、それ以外の事業すべてが黒字となった。「独立と連携」をキーワードに、グループ各社がそれぞれ事業を拡大し、利益を生み出した。
取次事業は売上高4758億1500万円(同5・7%減)、営業損失3400万円(前年度は3億4000万円の損失)、経常利益2億5300万円(同22・4%減)だった。日販は、BOOKの大幅減収や運賃効率の悪化に対し、固定費の削減や荷造費の圧縮を図ったことに加え、事業再編に伴う親会社との経費精算など特殊要因があり、営業赤字幅を削減した。MPDは、BOOKに加えてゲーム、セル、レンタルでも減収となったが、文具雑貨の取引店舗数拡大による増収に加え、拠点再編等の固定費削減により増益となった。
小売事業は売上高610億1500万円(同2・6%減)、営業利益1700万円と黒字転換(前年度は1800万円の損失)、経常利益5000万円(同234・2%増)。不採算店舗の撤退、本部機能の効率化や賃料等の管理費を削減したことが奏功して黒字化した。グループ書店の新規出店は5店舗、閉店は17店舗で、20年3月末時点の店舗数は250店舗となった。
海外事業は売上高68億5500万円(同9・3%増)、営業利益2億1200万円(同32・4%増)、経常利益2億2300万円(同33・9%増)。日販アイ・ピー・エスは海外駐在員向け生活支援サービス「CLUBJAPAN」が新規顧客の獲得により売上げを堅調に伸ばした。
雑貨事業は売上高19億3300万円(同7・8%増)、営業利益800万円(前年度は5200万円の損失)、経常利益1億1300万円(同22・3%減)。ダルトンは3店舗を新規出店し、店舗数はリアル店舗10店、オンライン店舗1店の計11店舗となった。
コンテンツ事業は売上高17億3000万円(同22・5%増)、営業利益5億1300万円(同11・2%増)、経常利益5億1200万円(同5・3%増)。ファンギルドはすべての漫画レーベルが増収となり好調。アジアを中心とした海外販売の売上も伸長した。
エンタメ事業は売上高17億4000万円(同8・7%増)、営業利益6100万円(同204・1%増)、経常利益6100万円(同184・5%増)。検定は新規に7件を立ち上げ、年間49件を運営した。イベントは「ねこ検定」から派生した「にゃんぱく」に約8000名、「文具女子博2019」に3万8000名が来場した。
不動産事業は売上高29億4700万円(同12・7%増)、営業利益11億6900万円(同7・1%増)、経常利益11億2500万円(同5・0%増)。新お茶の水ビルディングは現在満床。蓮田ロジスティクスは倉庫事業から借地事業へ転換したことで増収増益となった。
その他の事業は売上高53億400万円(同24・2%増)、営業利益1億600万円(同345・5%増)、経常利益5億3400万円、5億900万円の増益となった。なお、持株会社体制移行に伴い、従来取次事業に含めていた受取配当金、金融収支については、19年度よりその他の事業へ区分を変更している。
日本出版販売は19年10月1日に持ち株会社体制に移行し、日販GHDに商号変更している。新設した完全子会社である日販は、19年10月1日~20年3月31日の下半期のみの成績を開示した。売上高2136億7400万円、営業利益7200万円の赤字、経常利益4400万円、当期純利益2億8800万円だった。
また、参考資料として管理会計ベースで通期(19年4月1日~20年3月31日)の成績を開示した。売上高4139億3100万円、営業利益2億5300万円の赤字、経常利益4100万円の赤字だった。日販の取次事業は3億1400万円の営業赤字で、これで3期連続の営業赤字となった。事業再編に伴う親会社との経費精算など特殊要因があったため、その分を差し引くと、実態としての赤字幅は前年より拡大している。

【奥村社長/流通コスト削減が急務/物流量減少も輸送運賃下がらず】
日本出版販売の奥村景二社長は決算発表の席上、出版流通改革の取り組みについて説明した。概要は以下の通り。

出版業界は雑誌の低迷、書店の廃業、デジタル配信市場の伸長を背景に、ここ20年間の出版販売金額が約半分まで縮小。物流量の減少が輸配送効率の悪化の形で打撃となり、出版流通はすでに崩壊状態となっている。
運送会社からは運賃の値上げ要請が相次いでいる。14年度から18年度までの5年間で約20億円上昇しているが、19年度は1年で約12億円増加した。運賃値上げによる負担は非常に重く、取次事業は3期連続の赤字となった。値上げ要請は現在も続き、20年度も値上げせざるを得ない状況となっている。
物流量の減少は運賃契約形態にも影響を及ぼしている。従量制の運賃では運送会社の採算が合わないため、物流量に連動しない運賃契約の割合が増加している。物流量に連動して下がらない固定運賃は、15年度は32%だったが、19年度は50%となっている。固定運賃の割合増加が、物流量の減少がそのまま運賃の減少に直結しないことの主な要因となっている。
支払い運賃の総額は00年度から毎年下がっていたが、14年度以降は130億円程度で横ばいで推移している。配送効率を示す1冊当たりの運賃は14年度と比較すると1・6倍の13・7円に増加している。今後も物流量は減少し、1冊当たりの運賃は上昇すると予測している。
運賃問題は即座に解決しなければならない課題。日販の自助努力として固定費削減に取り組むとともに、取引先の出版社と仕入れ条件の見直しや物流コストの一部負担に関する条件協議を行っている。高騰する労働コストを削減するため、同業他社であるトーハンとの物流協業も進めている。
今後も物流コストはさらに上昇することが予測される。出版業界全体の共通課題であることを理解していただき、業界3者で抜本的な問題解決に取り組む必要がある。日販が出版流通改革で目指すのは、業界3者のビジネスが成立し、出版物を全国へ流通し続けられる状態にすることだ。
持続可能な出版流通体制の構築のため、サプライチェーンの効率化による流通コスト削減は重要なテーマ。「製造・販売起点」から、業界全体の効率を重視した「流通起点」のサプライチェーンにシフトすることが必要だ。
物流量が減少しても、比例して運賃が減少し続けるわけではない。そのため、配送頻度を削減し、荷物をまとめて送ることがコスト抑制につながる。休配日を増やす方向で協議を進めている。
出版社から取次への搬入~店着までのリードタイムに余裕を持たせるよう改善を進めている。店着日時の制約が厳密であるほど、人件費の高騰、配送効率の悪化、アイドルタイムの発生を招き、運賃高騰へと直結する。出版社からの搬入日の前倒し、店着時間指定のさらなる緩和といった、業界全体の協力が不可欠だ。
配送頻度の削減は、業量の平準化とセットで推進していく必要がある。1日あたりの点数でいうと平準化が進んでいるが、冊数ではまだ業量に大きな偏りが発生している。JPROの登録データをもとに業量の平準化を推進していきたい。
ビジネスとして成立する取引構造に作り変えることも必要。まずコストの主体を明確にし、業界3者がコストの負担配分や新たな仕組み、ルールについて協議しなければならない。
当たり前だったはずの出版物の安定供給・安定配送は、今や当たり前ではなくなっている。既存の仕組みとルールのままでは未来を描くことはできない。出版物を作り、届け、売り続けることを未来でも当たり前にするために、業界3者が一体となって出版流通改革を推進していきたい。
メンテ

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