出版・書店 業界 NEWS BOOKSルーエ


出版書店 業界NEWS TOPへ > 記事閲覧           新文化 定期購読 受付  

紙の出版販売金額1・0%の減/紙と電子合算の販売額は2年連続伸長/出版指標年報
日時: 2021/07/08 15:04:15
情報元: 日書連

全国出版協会・出版科学研究所が発行した『出版指標年報2021年版』によると、2020年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1・0%減の1兆2237億円となった。内訳は、書籍が同0・9%減の6661億円、雑誌が同1・1%減の5576億円。電子出版は同28・0%増の3931億円と大きく伸長し、紙と電子を合算した販売金額は同4・8%増の1兆6168億円と、2年連続でプラスになった。

〔コロナ禍で読書への関心高まる/書籍〕
書籍の推定販売金額は6661億円、前年比0・9%減と微減にとどまった。新型コロナウイルス感染症拡大により3月に始まった学校一斉休業を機に、学参、児童書の売上が急激に伸長。リモートワークの導入に伴い、ビジネス書、コンピュータ書も売行きを伸ばした。このほか文芸書、ゲーム攻略本が前年を上回るなど、健闘したジャンルが多かった。外出自粛で在宅時間が増加したこともあり、読書への関心・ニーズが高まりを見せた。推定販売部数は同2・0%減の5億3164万冊で、過去3年間が3~5%台の減少だったことと比較して減少幅は小さくなった。
20年のベストセラーを見ると、爆発的にヒットしたコミックス『鬼滅の刃』(集英社)のノベライズ作品が上位に集中するなど、書籍でも「鬼滅」効果が絶大だった。児童書、学参は春先だけでなく年間を通して好調に推移。文庫本や児童書の名作読み物など、ロングセラー作品の売行きも例年以上の伸びを示した。
金額返品率は33・0%で同2・7ポイント改善。2ポイント以上の改善は04年以来。年間を通して販売が好調だったこと、推定出回り金額が同4・9%減と新刊・重版ともに送品が絞られ、効率販売が進んだことが改善につながった。
新刊点数は同4・6%減の6万8608点で、7万点を下回ったのは01年以来。内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同3・7%(1832点)減の4万7589点、注文扱いの新刊が同6・5%(1463点)減の2万1019点。点数減は、コロナ禍で制作中止・延期となった書籍が多かったことが影響した。新刊推定発行部数は同5・8%減の2億7860万冊と点数以上に落ち込んだ。
ジャンル別動向を見ると、文芸書は、本屋大賞受賞の凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)をはじめとした文学賞受賞作や、東野圭吾、池井戸潤、村上春樹など人気作家の新刊が売上を牽引。ノンフィクション・読み物では、50万部を突破した『「繊細さん」の本』(飛鳥新社、18年刊)などメンタルケア関連書のヒットが目立った。ビジネス書では『FACTFULNESS』(日経BP発行/日経BPマーケティング発売、19年刊)が紙版で84万部と大きく伸長した。文庫本は、カミュ『ペスト』(新潮文庫)や五木寛之『大河の一滴』(幻冬舎文庫)など、コロナ禍を機に改めて注目された既刊のヒットが相次いだ。
20年の単行本総合ベスト10は次の通り。<1>鬼滅の刃しあわせの花/吾峠呼世晴・原作、矢島綾・ノベライズ/集英社<2>鬼滅の刃片羽の蝶/吾峠呼世晴・原作、矢島綾・ノベライズ/集英社<3>鋼鉄の法/大川隆法/幸福の科学出版<4>鬼滅の刃風の道しるべ/吾峠呼世晴・原作、矢島綾・ノベライズ/集英社<5>ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ/新潮社<6>ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治/新潮社<7>流浪の月/凪良ゆう/東京創元社<8>Sincerelyyours…/田中みな実/宝島社<9>人は話し方が9割/永松茂久/すばる舎<10
>「繊細さん」の本/武田友紀/飛鳥新社

〔「鬼滅」人気が市場を下支え/雑誌〕
雑誌の推定販売金額は5576億円、同1・1%減。内訳は月刊誌が同0・5%増の4662億円、週刊誌が同8・5%減の913億円。月刊誌の内訳は、定期誌が同11・3%減、ムックが同14・9%減、コミックス(単行本)が同27・4%増だった。年間で雑誌全体の減少幅が2%以内にとどまったのは05年以来で15年ぶり。記録的ヒットの『鬼滅の刃』をはじめとしたコミックスが市場を大きく下支えした。定期誌は、継続して売れる雑誌が少なくなり、グッズ付録の効果も以前より減少。ムックは旅行関連を中心に刊行点数が激減した。
推定販売部数は同2・2%減の9億5427万冊。内訳は、月刊誌が同1・0%増の7億1170万冊、週刊誌が同10・4%減の2億4257万冊。金額返品率は40・0%と同2・9ポイント減少し、2年連続の改善。コミックスの好調が大きく影響したが、定期誌もわずかに改善した。
不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同291点減の2975点、ムックは同992点減の6461点。付録つき雑誌の点数は同1009点減の1万302点だった。創復刊点数は同15点減の43点と、過去最少を記録した。休刊点数は同29点減の98点。『東京ウォーカー』(KADOKAWA)、『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)など有力誌の休刊が相次いだ。

〔コミックが新規ユーザーを拡大/電子出版〕
電子出版の市場規模は3931億円で、同28・0%増と大幅に伸長した。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同31・9%増の3420億円、電子書籍が同14・9%増の401億円、電子雑誌が同15・4%減の110億円。コミックは、コロナ禍の巣ごもり需要でユーザー数が拡大したことが大幅増に寄与。『鬼滅の刃』の大ヒットに加え、「異世界系」ジャンルの作品が好調だった。書籍は、ライトノベルやビジネス書の人気が高く堅調な伸びを示した。雑誌は、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数が夏以降再び減少し、3年連続の2桁減。
メンテ

Page: 1 |